土壌汚染対策法で規定がなくても油分の漏洩は問題になる
ガソリンスタンドや油槽所など、一般的に“危険物施設”に区分される事業所の土壌汚染調査については、特殊な事情があります。ガソリンに含まれているベンゼンは、第1種特定有害物質に規定されている揮発性有機化合物のひとつに分類されますが、実はガソリンは土壌汚染対策法による規制の範囲外となっています。
すなわち、ガソリンスタンド等の移転や閉鎖時に土壌汚染の状況把握のための調査を実施する法的な義務は発生しませんが、だからといって安心できるわけではなく、各種油類による土壌汚染は多発しています。日常的な点検ではカバーできない、地下タンク下部の地中で発生する設備劣化による油分の漏れは、例え亀裂箇所が小さく微量であっても、長年に渡って地下に漏れ出し、地下水脈に到達して拡散される可能性を否定することはできません。
但し、独自にガソリンスタンド廃止時に土壌汚染調査を義務付けている自治体もありますので注意が必要です。(東京都、埼玉県、愛知県、香川県、横浜市、川崎市、さいたま市、名古屋市 2017年3月現在)
ケーススタディ
ケーススタディ
3メートル掘削した時点で残油が漏れだした
敷地外への影響はもちろん、工場移設後、住宅地やショッピングセンターの開発が行われるなど、用途が変更された際、掘削工事の段階で地中に油分が残っていることが判明した場合、重油を漏洩した企業に対して巨額な対策費用や工事遅延に対する補償金が請求される場合が有り、大きなリスクが存在しています。
実際に、しっかりとした調査を行うことなく手放した土地にマンションが建設されることになり、基礎工事の為に掘削した時点で残油が地中から漏れだし、大きな問題なったという例もあります。補償金負担の問題もさることながら、社会的責任という意味においても、土壌汚染調査や対策は必須です。